平成17年6月5日(日)、9時半頃、一関市総合体育館に到着。
アリーナ観客席に入ると、まさに準決勝が始まろうとしている所。
選抜優勝大会で不来方高を破っているとはいえ、今回もそう簡単に勝てるとは思えなかった。
しかし、コート上の盛岡一高選手諸君を見ると、いい感じにリラックスしているように思えた。いいぞいいぞ。
結果は3セットとも最少得点差である2点差で勝負がつくというまさに手に汗握る展開であった。
試合を通して、ズルズルと行きそうなところでよく踏ん張ったと思う。そして、最大4点差位開いたことがあったと思うが、そういう状況でも決して慌てず、仲間を信じて自分達のバレースタイルを貫いていたと思う。
そんな盛岡一高のねばりが、3セット目の最後の辺りでの不来方高の連係ミスやスパイクミスにつながったのだと思う。勝利の瞬間、2階応援席に居たマネージャー君が号泣していた。この勝利の意味が、この涙から伝わってくる。
さあ、いよいよインターハイの切符をかけて、盛岡南高との大一番だ!Aコートに場所を移し、荷物の置いていない2列目に陣取って開始を待つ。
下級生数名とマネージャー君が客席にやってきて、伝統の赤い横断幕を手すりに取り付ける。「若き熱血 白堊健児」の赤い横断幕は、私の一つ上の先輩が北奥羽大会で見事優勝し、春の高校バレーの出場を決めた後で、ОB会の皆様が寄贈してくれたものだ。
あれから23年、このひときわ大きく、赤い横断幕は、盛岡一高の試合を応援し続けてきた。この横断幕に、再び高校総体優勝の感動を味わわせてあげたい。
マネージャー君の指示で、少しのたるみもなく、しっかりと手すりに取り付けられた。
袴姿、学ラン姿の合計4人の応援団員同様、背筋を伸ばして試合開始を待っている。
Aコートが男子決勝用に設営され、盛岡南高の選手がコートに入ってきてストレッチなどをのんびり始めている。
盛岡一高の選手達はまだ姿を見せない。
いいじゃないか、いいじゃないか。どこかでじっくり、決勝に対する精神集中をしているのだろう。
実は、一足先に第3代表決定戦を行っている釜石南の選手達は、私の勤務する地区の中学校の出身者達であり、中学校の大会で戦ってきた連中である。ユニホームを着てマネージャー役をやっているのは教え子だ。中学時代、県大会を経験しなかった連中、県大会で決して上位に進めなかった連中、が、抜群のレシーブで最後の大会で第3位にまで登ってきている。彼らの体を投げ捨てて拾い、高いブロックを恐れず打ちまくる姿にも感動していた。
盛岡一高もやれる。最後の最後、盛岡南高相手にやってくれるはずだ。
第3代表決定戦に心奪われている間に、Aコートでも、ボールを使った練習が始まっている。
見間違いかもしれないが、田中監督は、これから決勝戦だという前の練習で、チャンスボールをセッターに正しく返す練習をしていたように見えた。
これが、岩手日報でも報道された、「基本に忠実なプレーを心掛けた」ということなのだろう。そして、それが勝利に繋がった。
武者震いが起きるような興奮の中、決勝戦が始まった。
応援席の私は気負ってしまって、体中無駄に力が入ってしまっているのだが、選手達にそういった硬さはない。準決勝同様、いい状態のようだ。いけ、いけ、いける、いける!
盛岡南高のセンター菅田選手が足を怪我しているようで、動けないでいるが、彼も最後の試合なので、決してベンチに下がろうとはしていなかったようだ。しかし、やはり盛岡南高のリズムはよくないようである。
一進一退を繰り返す1セット目、しかし、盛岡一高は準決勝で一進一退の勝負をモノにしている。案の定、このセットも準決勝同様、2点差で勝利した。
応援席の怒涛の盛り上がり。若いОB連中が椅子に立ち肩を組み、叫びながら揺れている。それに両手を上げて応える田中監督。
2セット連取で決めてほしい! それができるムードが盛岡一高にはある!
皆の願いが込められた2セット目が始まった。
出だし、盛岡南高が連取した。硬くなっているのか? いやいや、そんなことはないようだ。焦りもない。それ以上点差を離されずについていっている。たまに強烈なスパイクをコートに叩き込まれるが、単発だ。盛岡一高のねばりが確実に相手より勝っている。
中盤で逆転。行け、行け、20点を早く取れ! このまま行ける!
待てよ、春高予選のように、5セットマッチではないだろうな、などというバカな考えが頭に浮かんだ。
2年前水沢で、中南先輩や和田先輩と、1-2で負けた瞬間を見ているじゃないか。今度こそ、2セット先取するのだ!
24点を取った。23年間の願いが、次の1点に込められた。
拾った、レフトに上がった、ストレートに打ち抜いた、コートに落ちた!
なんということだろう。田中監督が3月には「かなり遠くて大きな一歩」と語っていた盛岡南高と盛岡一高の差を、3か月でひっくり返してしまった……。
田中監督がベンチで後ろを向いたりして……泣いている。いいじゃないか、うれし泣きだ。堂々と泣いていいじゃないか。今まで、悔し涙は意地でも隠してきたのだろう。
応援席へのあいさつのあと、一度、二度、三度、田中監督が宙に舞った……。
素晴らしき選手達、マネージャー、そして監督。本当に、素晴らしいチームになりましたね。本当に、おめでとうございます。更なるご活躍を期待しています。